第11章では、ラテンアメリカでは1990年代末より左派政権数が急激に増える、左傾化と呼ばれる現象を扱いました。これを受け、最近の状況を扱った第12章では、1990年から2022年までのラテンアメリカ20か国における左派政権数を示しています(図12-2)。ここで言う「左派政権の数」とは、各年の1月1日時点で在籍している大統領に対して、左派であると評価できる大統領の数を指します。
評価にはV-Partyの経済右派・左派スケール (v2pariglef) を用いています。値は0(極左)から6(極右)まで7段階ありますが、そのうち0から2(中道左派)までのスコアを持つ政党に大統領が所属していれば、左派の大統領とみなしています。一部の政党はV-Partyの評価から外れているため、その場合は筆者が左派であるか否かを判断しています。
図12-2には、大統領選挙が行われた政治体制も表示されています。本書では体制スコア(V-Demの選挙民主主義指標)が0.4以上の体制を民主制、それ以外は専制としています。
2025年1月1日の状況も含めると、図12-2は次のように更新されます。オレンジは専制下で、青は民主制下で選ばれた大統領の数を示しています。データセットはこちらです。
2024年頭から2025年頭にかけて執政主の任期が終了した国における、左派・非左派の対応は次の通りです。(民)は民主制下、(専)は専制下で執政主が選ばれたことを意味します。
| 新政権・左派 | 新政権・非左派 | |
|---|---|---|
| 前政権・左派 | メキシコ(民) ベネズエラ(専) |
パナマ(民) |
| 前政権・非左派 | ハイチ(専) グアテマラ(民) |
エルサルバドル(専) |
民主制下では左派政権数に変化はなく、専制下で一つ増えました。具体的には、ギャングの抗争で実質的に政府が統治不能となっている(第12章コラム参照)のハイチでは、2024年頭で暫定大統領であった無所属のアリエル・アンリが辞任した後、複数の政治家で構成される暫定大統領評議会が執政を担っています。議長は輪番制となっていて、2025年度頭時点では中道左派政党とされるファンミ・ラバラ所属のレスリー・ボルテールが議長でした。
なお、一部の報道や書籍では、2020年代の左派政権数の増加を「再左傾化」や「第二の左傾化」と称することがありますが、少なくとも現時点では、この表現が適当であるとは言い難いところがあります。1990年代末に始まる左傾化は、新自由主義を基調とする政治への反発に起因し、左派政権数が長期的に増加しました。2020年に入ってからの左派政権の増加は、不況と選挙サイクルが重なった結果、右派の与党が勝てなかったことに起因すると思われ、長期的に増加するかは不明です。実際、左派政権数は2023年頭に増加した後、ここ2年は横ばいが続いています。
左派政権の増加は21世紀初頭と2020年代で異なる性格を持つことから、「再」や「第二」という表現で両者を同質的に扱うのは難しいことについて、詳しくはこちらをご覧下さい。
